住宅診断で気になるチェック項目として基礎のひび割れがあげられます。
物事において「基礎が大切」と言われることから、建物においても基礎は大切なチェック項目といえます。
住宅基礎の構成について
通常、外部の基礎表面にはモルタルと呼ばれるものが塗られています。
このモルタルは、表面の見た目を良くするために、表面に厚さ5mm程度がお化粧として塗られており、構造としての耐力はありません。
モルタルに細かいひび割れが発生する可能性はありますが、モルタルだけが大きく割れてしまうことは考えにくいです。
モルタルの表面が0.5mm以上も割れているということは、その下にあるコンクリートも割れている可能性は高いでしょう。
ひび割れがコンクリートまで達しているか確認するためには針金などが必要になります。
ひび割れに針金を入れてみておおよそ5mm以上入っていくようであれば、コンクリートにもひび割れが入っている可能性は高いですが、奥行き5mmぐらいのところで止まるならば、表面モルタルだけの割れだと考えられます。
ひび割れ幅はどのように測ったらいいのか?
0.5mmとはどの程度でしょうか?身近なもので測るならばシャープペンの芯です。
0.3mm未満はヘアークラックというような見解もあるので、こちらも0.3mmのシャープペンの芯で確認ができます。
ヘアークラックとは、髪の毛のような細いひび割れのことを言い、構造的に問題のない意味合いで使われます。
正確に測るにはクラックスケールと呼ばれるものを使用し計測します。
気になる方は、アマゾンなどで売っているので購入を検討してみてください。
深さについては、針金をひび割れに入れてみて、どの程度入り込むか確認すると良いでしょう。
基礎のひび割れには種類がある??
私は数多くのひび割れを見てきて、ひび割れのように見えるものには2つの種類があると考えます。
一つは当然、構造的に割れる純粋なひび割れです。
通常の縦ひびはこちら↓です。
その他はなんでしょう?
もう一つは、コンクリートが硬化していく過程で発生するひび割れです。
これはあまり知られていないのですが、新築時に発生する横ひび↓なのです。
縦ひびは直前的で切り口が鋭いのに対して、この横ひびは蛇行していてぼそぼそした感じが分かるでしょうか?
縦のひび割れは、構造的に割れたと判断しますが、ぼそぼそした横ひびは構造的に割れたというよりも、コンクリートの水分が関係したような感じがあります。
考えられる原因としては、コールドジョイントと呼ばれるものです。
コールドジョイントとは、先に打ち込んだコンクリートと後から打ち込んだコンクリートとの間が完全に一体化していない継目となります。写真のように大きな建物やコンクリート打ち放しで問題になることが多いです。
このコールドジョイントは、新築時からあるものなので、中古住宅でも残っていることがあります。
以前、私が中古住宅のインスペクションをした時、既にインスペクションがされた物件がありました。
ご依頼者様は、売主側のインスペクションでは不安ということで、当社に依頼がありました。
その時、報告書を拝見するとこの横ひびがあり、基礎に劣化ありとなっておりました。
劣化ありという判断は良いと思いますが、その理由やひび割れの見解が書かれておらず、単に基礎が劣化という報告書でした。
ひび割れに関してあまり経験のないインスペクターが報告書をまとめると、構造的なひび割れもコールドジョイントによるひび割れも同じように判断され、劣化とされてしまいます。
私は、この横ひびは構造的に割れたひび割れではないと判断し、ご依頼者様に丁寧に説明をさせていただきました。
このように、中古住宅のインスペクションは報告書だけを見てしまうと劣化ありということだけは知れるかもしれませんが、その奥に潜んでいる見解が分からないこともあります。
よって、住宅診断というのは、単に劣化などを発見して報告書にまとめることがすべてでなく、インスペクターの深い見解もコミュニケーションをして聞くことが大切です。
どのくらいのひび割れが良くない?
この判断は難しいところで、ひび割れ幅0.5mm以上を基準とする建築士もいれば、0.3mm以上が構造的なクラックと判断する建築士もいます。
中古住宅で行う既存住宅状況調査においては、ひび割れは幅0.5mmいう基準があります。
この基準を超えていたからと言って、売買してはいけないとか即危険ということではありませんが、中古住宅の場合0.5mm以上のひび割れは、劣化事象に該当してしまい「劣化あり」と判定されてしまいます。
0.5mm以上のひび割れは、原因は分かりませんが、地震などで構造的な負荷が掛かり割れた可能性があり、国交省としても劣化があると判断しているのでしょう。
確かにこの数値を超えてしまうと劣化ありにはなってしまうのですが、特に10年以上の中古物件においては0.5mm程度のひび割れは数本あっても珍しいことではありません。
0.5mm程度のひび割れが少しでもあったら購入を見送るような判断をしてしまうと、中古物件購入の選択肢が狭まってしまうと思います。
まして、築20年以上であるのに0.5mm程度のひび割れが不安となると、中古住宅の購入自体がかなり難しいと思います。
既存住宅状況調査における基礎のひび割れは、あくまでも劣化しているかどうかの判断であり、建物の耐震性を判断しているわけではありません。
ひび割れが耐震性を決めるわけではない。
一般の方は、基礎に少しでもひび割れがあったら大丈夫なのか判断したくなるでしょう。
しかし、基礎のひび割れだけで、その家の耐震性があるかどうかは判断できません。
そもそも、住宅診断では耐震性を判断はしておらず、最低限の耐震性を確認したい場合は、耐震診断をすることをおすすめしますが、その耐震診断も個人的には疑問があるため、興味のある方はこちらの記事もご確認ください。
住宅のインスペクションは、一つのマイナス要因だけで「大丈夫」とか「大丈夫でない」などと判断してしているわけではなく、ひび割れの大きさや数など、建物が傾斜していないかなど複合的に判断をしています。
また、ひび割れが少しあったからと言って、耐震性が無いということには結びつきません。
例えば新築住宅の家で話をします。
耐震等級3の家で0.5mmのひび割れが少しあった家があるします。
一方、耐震等級1でひび割れが1本も無かった家があったとします。
(耐震等級3の方が耐震等級1よりも耐震性があります。)
私はどちらを選ぶかと言われたら、ひび割れ多少あっても耐震等級3の家を選びます。
極端は例かもしれませんが、ひび割れの有無だけでその家の耐震性が決まるということではないということです。
基礎のひび割れについて、不安なことがありましたらお気軽にご相談ください。