中古インスペクションを依頼する際注意べき点

今日は、中古のインスペクションについて、ご説明したいと思います。

新築のインスペクションと中古のインスペクションでは検査内容が全く違うことはご存じでしょうか?
新築は劣化がないため施工不良を中心に検査することに対して、中古インスペクションは、ある意味劣化しかチェックしない検査と言えます。

中古インスペクションは、別名「既存住宅状況調査」と呼びますが、この調査は国土交通省によって検査内容(チェック項目)がほとんど決まっています。
率直にいうならば、検査員によって大きな差が生じようにチェックリスト化しているわけです。
ある意味、チェックリストに従ってチェックすれば間違いないし、インスペクションとしての業務範囲としては問題ないわけです。第三者の立場を大切にしているわけです。

ほとんどのインスペクターは、このチェックリストに従ってチェックしています。
ただ、実際のインスペクションにおいては、イレギュラーのこともありますし、インスペクションとは関係ないのだけど、買主さんには知っておいてほしいという内容があります。

例えば、擁壁です。
擁壁は、建物ではありませんので中古住宅のインスペクションではチェックしなくても良いわけです。
擁壁のことまでチェックしなくても何ら問題ないわけですが、私としてはとても気になる部分なのです。
なぜなら、擁壁や崖というのは色々目に見えない危険が潜んでいるからです。
中古物件のまま住んでいる分には何ら問題ないことも、新築時にはかなり問題が出てくることもあるからです。

例えば、擁壁があるせいで、
思ったよりも建物が建たない。
杭を打たなければならない。
高基礎しになければいけない。
など、施工費がかさむといった問題が潜んでいるからです。

厄介なのは、明らかに高い擁壁は一般の人でも分かりますが、1m程度の高さしかないのに新築時に影響することさえありますし、隣の擁壁なのに影響するという点です。
私は、新築の設計もやってきたので、築年数が古い物件は、特に新築することも考えてしまうのです。
なので、余計なお節介かもしれませんが、この土地は新築をするときは建設費が割高になるかもしれませんなどとハッキリ助言をさせていただいています。
(隣で立ち会っている不動産業者にとっては、とても嫌でしょうが)

インスペクションは、他の業種とはことなり、部屋を綺麗にするとか、エアコンを取り付けるなどの成果報酬型の業種とは異なる部分があります。

だから、建築の設計がほとんど経験のないインスペクターは、チェックリストに従ったことはやってくれるかもしれませんが、インスペクションに関係のない部分などは分からないということが現状です。

もう一つ、例えを上げるなら、
既存住宅状況調査では断熱材が有ろうが無かろうが関係ありません。
言うならば、既存住宅状況調査は、基本的に、「構造に関すること」と「雨水に関すること」だけしか点検しません。
インスペクターとして、断熱材について報告しなくても何ら悪くありません。既存住宅状況調査において断熱材はチェックしなくてもいいからですね。

当社は、ご依頼者様が現在住んでいる状況(木造やマンション)などの生活環境などにも踏み込んでお聞きしてしっかりアドバイスをさせていただいています。
既存住宅状況調査の報告書というのは、どの協会でも大きな差はほとんどありません。
通常のインスペクターは、この報告書に基づいてチェックして終わりですが、当社は、この報告書に加えて気になる点を追加して写真報告するようにしています。
この内容が意外と大切で、購入の判断になりますし、購入後に気を付けることが分かります。
インスペクションは不動産業者が自主的におこない、安心を売りにしているケースが増えてきています。
そうした不動産業者が自ら行うインスペクションは、余計なことは書かず、安い金額でできる方が都合がいいわけです。

しかし、これから中古物件を購入される方は、教科書通りの検査方法だけでなく、インスペクションとは関係ないことまでもアドバイスをしてくれるインスペクターに検査を依頼することがいいでしょう。

一口にインスペクションといっても、検査員によって検査内容やアドバイス方法が異なってくることを知っていただけたらと思います。

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