住宅検査は一級建築士がいい理由

住宅診断を依頼する時、診断する人がどのような資格を保有してるか気になるところだと思います。

建築士には、一級建築士・二級建築士・木造建築士がありますが、木造建築士はほとんどいないため、住宅診断を依頼する場合、ほとんどは一級建築士か二級建築士が診断することになると思います。

これらの資格区分で何が違うとかというと、資格によって設計や監理ができる規模が決められているということです。

端的にいうと、一級建築士は、建物規模に制限がなく設計や監理ができますが、二級建築士は、2階建てと3階建ての一般的な木造一戸建て住宅であれば設計も監理もできます。

住宅診断は、主に中古物件と新築物件がありますが、、中古住宅の売買を行う場合、既存住宅状況調査というものが国で定められています。

この中古住宅の売買に関わる場合の調査(既存住宅状況調査)においては、既存住宅状況調査技術者という資格が必要となります。

ちなみに、新築住宅の場合は、最低限建築士の資格は必要だと思いますが、既存住宅状況調査技術者の資格は必要ないでしょう。

既存住宅状況調査技術者は、あくまでも中古住宅の劣化があるかどうか判断する資格といえます。

既存住宅状況調査技術者は、建築士でないと取得することができず、建築士になった後に講習を受け、簡単な試験を受けて合格すれば取得できます。

その他、ホームインスペクターという民間の資格があります。

上で述べた既存住宅状況調査は、2017年に国が制度を整備した比較的新しい制度です。

それ以前は住宅診断の国家資格はなく、ホームインスペクターという民間の資格がありました。

このホームインスペクターという資格は、既存住宅状況調査技術者の制度ができる前からあり、私はこの資格を取得するために当時勉強しました。

昔は住宅診断という仕事がまだまだ普及しておらず、ホームインスペクターの資格を

広く普及させるために、協会として建築士でなくても受験できるようにしているだと思われます。

既存住宅状況調査の法整備がされていない頃は、建築士でない人が住宅診断をやっていたこともあったかもしれませんが、今では考えられません。

では、一級建築士がいいか二級建築士がいいか見ていきます。

先ほど述べた通り、一戸建て住宅の規模であれば二級建築士でも大丈夫です。

二級建築士が主に診断しているホームページによっては、
・住宅診断は、資格が無くても建物調査は経験がある方が信頼できる。
・資格保有だけを売りにしている会社は危ない。
なんてことが書いてあります。


果たしてどうでしょうか?

もちろん多少の経験があることは重要だとは思いますが、その主張は、検査をする立場からしか見ていないと思います。
検査をする立場からすれば、資格よりも経験が必要だと言えます。

では、ご依頼者の立場から見てみましょう。


ご依頼者は検査が終わったら検査員から報告書をもらいます。

その報告書ってどのようなものかご存じですか?

中古住宅の報告書の表紙をご覧ください。

赤枠で囲んだ通り、中古物件の場合、所定の報告書が使われることが一般的です。
そこには必ず、診断を実施した人の資格保有番号などを記入しなければなりません。
この報告書を受け取って、不動産業者や建設会社などにお渡しすることもあるでしょう。
そこで、二級建築士と記載されていたらどうでしょう。
私は、住宅診断において一級建築士の方が優れているとか、二級建築士は良くないなどというつもりはありません。

ただ、世間一般として一級建築士と二級建築士のイメージの違いはどうでしょう?

報告書にも二級建築士の名前が残ることを理解した上で診断を依頼されるならば良いと思いますが、そこまで理解せずに、渡された報告書が二級建築士だったらどうでしょうか。

ちなみに、一級建築士は国土交通大臣登録で二級や木造建築士は都道府県知事登録です。
よって、診断を依頼する場合、経験だけでなく報告書に記載される方の名前や資格も確認した上で依頼を検討するべきなのです。

中古住宅では報告書のひな形が決められており、診断者の資格保有を明記しないわけにはいきませんが、新築住宅の場合はこのひな形を使わず、会社独自のひな型を使用することになります。

場合によって、会社独自の報告書は、表向き上、診断をしていない一級建築士の番号や名前を載せて、実際診断した二級建築士の明記は避けている場合もあるかもしれません。

事務所の登録は一級建築士登録だけど、実働しているのは二級建築士というのは良くあることです。

これは、設計を依頼する時も同じかもしれません。

インスペクションも設計も、木造の住宅ならば二級建築士登録でも大丈夫。

それよりも経験が大切。

確かにその通りです。

ただ、二級建築士登録の場合、図面の枠には二級建築士の名前が記載されますし、公的な申請書なども保有資格や名前が記載されます。

人数を抱えているインスペクション会社にとっては、一級建築士保有者だけを確保することは人件費の上でも難しいため、組織化したインスペクション会社には二級建築士もいるわけです。


報告書は形として残こり、物件の交渉する相手にも見せるものです。
診断自体ももちろん大切ですが、しっかりと資格保有者も確認した上で依頼した方が良いでしょう。

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